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韓国映画、ドラマの感想&備忘録

「迫り来る嵐」あらすじとネタバレ感想 中国版「追憶の殺人」?

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殺人の追憶」「薄氷の殺人」に続く本格派サスペンス映画の誕生!


なぬ?あの韓国映画の傑作殺人の追憶に続く本格派サスペンスとな?

迷わず手に取りました。

中国の映画を観るのは久しぶりで聞き慣れない言語に違和感を覚えました。が、すぐにこの映画の世界に引き込まれていきました。
期待以上に面白かったです!


監督のコメント

どこにでもいるような人物が、時代の性質しだいでいかに影響を受けるかを描くことで、その時代をむき出しにし、その社会の精神性みたいなものを浮き彫りにしたい。
ドン・ユエ(監督・脚本)

この映画は、主人公がどこにでもいるような人物であるということが怖いのです。

概要



[監督・脚本]

 ドン・ユエ


[キャスト]

 ドアン・イーホン
 ジャン・イーエン
 

[受賞歴]


第30回東京国際映画祭最優秀男優賞
第30回東京国際映画祭芸術貢献賞
第12回アジア・フィルムアワード新人監督賞
第26回上海映画批評家協会賞新人脚本賞



あらすじ



古い製鉄所で警備員をしているユィ(ドアン・イーホン)は近所で起きている若い女性の連続殺人事件の捜査に首を突っ込み自ら犯人を捕まえようとする。ユィが異常な執着で犯人を捜査がする中、自分の恋人のイェンズ(ジャン・イーエン)が被害者に似ていることに気づく。





ネタバレ感想


映画のオープニングは刑務所から出所したばかりの覇気のないユィ(ドアン・イーホン)の過去の回想から始まります。


1997年中国、女性だけを狙う残忍な連続殺人事件が起こります。
雨で証拠は消されて犯人の手がかりがない。


なるほど。
ソン・ガンホ主演のあの殺人の追憶の中国版といわれるのはそういうことですね。
確かに雨が圧倒的な存在感。雨なくしてはこの映画はなりたちません。


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回想シーンからは出所した時の弱々しいユィとは全く違う生き生きとしたユィが、刑事でもないのに工場付近の連続殺人事件現場に現れて目を輝かせながら女性の遺体を念入りにパシャパシャと撮っています。その行動は異様で、私は彼が犯人なのではと疑いました。やっていることは刑事のようなことですが彼の行動は異様でした。


ユィが犯人と同じようなレインコートに身を包んでいるシーンが多いので犯人としての違和感なし、


「今のままで満足だ」


彼がその言葉を発する度、私は彼が犯人に思えてなりませんでした。
飲みの席で会社の同僚に公安部への昇進を目指すよう煽てられた時や恋人のイェンズ(ジャン・イーエン)に目標は何か聞かれた時、ユィは「今のままで満足だ」と答えます。
そう答えるほどにユィが小さな人間に見えてやるせなかったです。



「俺はこのまま警備員で終わるような人間じゃない」



ユィ自身が誰よりもそう思っていたのでしょう。


途中までユィの読みは当たっていたんです。犯人に罠を仕掛けて犯人はそれに食いついてきましたから。
でも、犯人に近づこうとしたその瞬間、車に残っていた後輩のリゥが過ってクラクションを鳴らしてしまって犯人に気づかれたことで、ユィの望みとはかけ離れた運命が待ち受けることになってしまったのです。


犯人を追跡中に後輩のリゥが感電して落下した時、助けるより犯人を追うことを選んでしまいリゥは死んでしまいます。
「もう少し早ければ救えたかもしれない」
医者からの言葉に呆然と立ち尽くすユィ。
慕ってくれていた後輩のリウを死なせてしまったことでユィの事件への執着が一層増していくことになります。


そして、連続殺人事件の被害者が自分の恋人のイェンズに似ていると気づいたユィは、イェンズを犯人を誘き出す囮にするほどのめり込んでいきます。自分が囮として利用されていたことを知ったイェンズはユィの目の前で飛び降りて自殺。
やることが裏目にしか出ずに、もうすでに正気を失っていたユィは犯人だと目をつけていた男をボコボコにして瀕死の状態にします。
そして11年服役することになります。


しかし真犯人はあの雨の日の追跡中に車に轢かれてすでに死んでいて、もう存在しない犯人を追いかけて全く関係のない人間を犯人だと思い込み瀕死の状態にしてしまっていたのです。


工場の警備員が公安部に昇格したいという望みを持ち、捜査に勝手に割り込み同僚を死なせ恋人も自殺に追い込み、逮捕までもう少しだった犯人が車に轢かれるきっかけを作り、全く関係のない人物を瀕死の状態にする。


もう彼のやっていることが裏目に出すぎて、痛々しい。彼の内に秘めた欲望が暴走して同僚恋人を死に追いやり無関係の男の人生をめちゃめちゃにして自分は11年も服役することになるのですから。


希望に満ちていたはずの彼の人生の待ち受けるものの悲惨さは想像を上回りました。


刑期を終えて出所して働いていた工場へ向かい、ユィは工場の模範工員の表彰式に立っていた自分を回想します。
過去の栄光。


しかし、そこにいた清掃員のような人に、あの時代は表彰式はなかったと否定されます。
あったはずだと反論もせずただ立ち尽くすユィ。
過去の栄光はすべてユィの妄想だったのでしょうか。



ごく普通の人間が自分を過大評価して夢をもった行く末の残酷さに震えました。